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みなさんは、里海という言葉を聞いたことはありますか?里海とは、人の暮らしと自然の営みが共にある海辺のこと。今回は、そんな里海づくりについて、いっしょに見てみましょう。
人間と海のちょうど良い関係
里海は、人の手が加わることによって、豊かになった海辺です。私たち日本人は、古くから多様で豊かな海に支えられながら、暮らしの中で伝統や文化を育んできました。しかし、高度経済成長期の開発とともに、自然環境や水質の悪化、海辺のうめ立て、藻場や干潟の消失などが進み、大量の産業・生活排水が海に流れこみ、富栄養化による赤潮などが日本各地で発生しました。
瀬戸内海は「瀕死の海」と呼ばれるほどに水質汚濁が進行してしまったといいます。アマモ場は1960年から1990年ごろまでに約7割、干潟は1900年ごろから2006年までに約5割消失しました。干潟、藻場の減少や水質汚濁などが原因で、瀬戸内海での漁獲量は1980年ごろのピークから減り続けているといいます。
[図1]
藻場の面積の推移
(出典:環境省「せとうちネット」)
バランス良い循環で豊かな里海が守られる
森に降った雨は、葉や腐葉土の中にたくわえられ、栄養物質が溶けこんで、ゆっくりと川や海へと流れていきます。海では、その栄養が植物プランクトン、海そうなどに利用され、食物連鎖により動物プランクトン、魚類などへとつながっていきます。
森・里・川・海において、バランス良く物質循環が行われることで、豊かな里海が守られます。そのためには、森づくり、川の取り組み、各家庭においても洗剤を適量使うなど生活排水のよごれを減らす心がけが大切になります。
令和4年度から、国では「令和の里海づくり」モデル事業を展開し、地域の取り組みを後押ししています。NPOや地方自治体などによる生物観察会、体験学習、海岸清掃活動など、さまざまな取り組みが行われています。みなさんも参加して、令和の里海づくりの推進に協力してみませんか?
[図2]
森・里・川・海における物質循環
里海って何だろう?
里海は、人の暮らしと自然の営みが密接な沿岸地域のことです。 里海は、人の手で管理されることによって物質の循環機能が保たれ、 私たちに多くのめぐみをあたえてくれます。
未来のためにも、私たちは豊かな里海づくりが必要なのです。
里海づくりに向けた各地の活動
日本各地で里海づくりに向けた活動が行われています。
[流域一体型]
森から海までを一体としてとらえた活動
植樹(岩手県一関市提供)
[ミティゲーション型]
都市開発などにともない失われた環境の再生活動
関西国際空港緩傾斜護岸(関西国際空港用地造成株式会社提供)
[都市型]
都市近郊にある藻場など浅海域の保全・再生活動
東京湾:横浜(NPO法人海辺づくり研究会提供)
[鎮守の海型]
禁漁区・禁漁期の設定による神域づくり的な活動
大分県姫島
[体験型]
都市近郊で行う、都市住民による体験活動
兵庫県赤穂海岸
[漁村型]
漁村が主体となり、漁業活動の中で実施する活動
三重県英虞湾
里海に関する用語解説
[里 海]
九州大学柳教授によると、里海とは「人手をかけることで生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」と定義されています。各地域、団体ごとの定義や思いによって、里海の創生・保存が行われています。
[赤 潮]
海域で特定の植物プランクトンが異常増殖することによって海水が変色することをいいます。植物プランクトンの種類によって無害な赤潮もありますが、多くの赤潮は魚のえらの細胞を破壊して魚を死なせてしまうなど、水産業に大きな影響をあたえます。
[干 潟]
干潮時に沿岸域に現れる砂やどろがたまる場所。魚類や水鳥などが数多く集まり、多様な生物が生息する場となっています。
[藻 場]
沿岸域の改定で海草や海そうが群れて形成している場所。海水中の栄養物質を吸収して水をきれいにしたり、水中に酸素を提供したりします。多様な生物の生息場所になっています。
参考:環境省『森・川・海における物質循環と人との関わり』
監修:環境省 水・大気環境局 海洋環境課 海域環境管理室

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