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かつて風光明媚な海岸線を誇った港町・横浜は、戦後の高度成長期、公害という大きな困難に果敢に取り組んできました。現代において、環境問題は気候変動やそれに伴う自然災害、生物多様性の喪失など、複雑かつ多様化・広域化し、これまでにない大きな課題に直面しています。
横浜市は、次世代に豊かな自然環境を引き継ぐために、様々な環境施策に取り組んでいます。その一つが「エコチル横浜版」を活用した子どもやファミリー層に向けた環境情報の発信です。2024年にアドバコムと連携協定を結び、いかに子どもたちにもっと環境に関心を持ってもらえる機会をつくることができるか、チャレンジしています。2027年3月に開幕される「GREEN×EXPO 2027」(2027年国際園芸博覧会)の会場となる横浜市。未来を担う子どもたちへの環境教育を通じて、環境にやさしい行動ができる人たちを育てることに積極的に取り組んでいきます。
温暖化対策のシンボルでみなとみらいの風景として横浜市民にはなじみの深い風力発電「はまウイング」(中央)
市民に寄り添う環境の街
「横浜方式」から続く、ともに歩むおもい
横浜市の環境問題への取り組みは、戦後の高度経済成長期に社会問題となった公害が原点ではないでしょうか。東京に近く、市の臨海部は京浜工業地帯であり、鉄鋼や石油化学などの重化学工業の工場が数多く立ち並びました。日本の戦後復興を支えた一方で、大気汚染や水質汚濁といった公害や人口増加に伴うごみ量の増加など、当時「五大戦争」と呼ばれる都市の緊急課題がありました。
公害については、工場周辺住民による住民組織がつくられ、その声を受けた横浜市は、京浜工業地帯の個々の企業と話し合い、法より厳しい市独自の排出基準を定めるという「公害防止協定(現・環境保全協定)」を締結することで、大気や水質の公害防止を図っていきました。この方式は、その後の他の自治体における公害対策のモデルにもなったそうです。
ごみ問題をみると、1970年代から地域単位での古紙や古布などの資源回収がありましたが、2002年にごみと資源をさらに細かく分別するルールが始まった際には、住民同士が声を掛け合って積極的に取り組み、その結果、横浜市が決めたごみ減量の目標を前倒しで達成できました。
また、横浜市は1993年に「横浜環境活動賞」という表彰制度を創設しました。これは、都市問題の解決のみならず、地域の市民や市内の企業が、地元の身近な自然や環境を守り再生し創造していくために自主的に活動されていることを、表彰という形で広く発信するものです。
横浜市みどり環境局公園緑地部環境活動事業課長の森山晴美さんは、「このような歴史を見ると、横浜市民には、自分の住む街が暮らしやすくなるように地域で協力し合って活動する素地があると思います。市は地域の方々と一緒に成果を出し続けてきました」と話します。
一人の職員の気づきからスタート
「エコチル」と横浜市をつないだもの
エコチル横浜版の創刊号
2019年4月に「エコチル横浜版」が創刊され、市立小学校で児童に配布されました。このとき、環境分野の施策立案を担当する市職員が子どもの学校プリント類の中に「エコチル横浜版」を発見、「こんな媒体が学校で配られている!」と職場で紹介しました。そこからアドバコムと話し合いが始まり、2021年度に協力関係がスタートしました。
横浜版の巻頭特集記事では、温暖化対策、生物多様性のほか、3R(ごみを減らす・繰り返し使う・資源に戻す)や緑、下水道、環境保全、地産地消などなど、様々な部署が身近な環境を切り口に記事を作成、掲載してきています。
環境活動事業課で環境教育を担当する今野智惠さんは「むずかしく感じられがちな環境問題について、エコチルはイラストや写真を使って小学生に分かりやすく伝えるスキルを持っています」と評価。自身も、子どもが学校から持ち帰るエコチルに目を通していて、「大人が読んでも勉強になります。環境問題について親子で話すきっかけにもなっています」と話します。
紙面とイベントの連動
知識を体感につなげる
エコチル配布開始から5年を経た2024年11月、横浜市はそれまでの協力関係から、アドバコムと「環境教育・学習の推進に関する連携協定」の関係へと進みました。エコチルを活用した環境情報の発信、そして市やアドバコムが開催するイベントに連携することが主な内容です。この連携協定を基に、子どもたちの環境教育・学習をさらに推進し、環境行動を実践する人づくりに積極的に取り組んでいます。
たとえば「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル」にはエコチルが登場しました。「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル」は、「GREEN×EXPO 2027」開幕に向けたムードを盛り上げようと、2024年から毎年5月のゴールデンウイークに、みなとみらいの横浜国際会議場「パシフィコ横浜」で開催している日本最大級の園芸イベント。約4万人が来場するこのイベントに、協定締結後の2025年と2026年に、アドバコムと横浜市が連携し、環境に関するクイズやワークショップを展開するブースを出展しました。そこにはエコチル紙面を拡大した「エコチル塔」が設置され、広い会場でも一際目を引き、ファミリー層が多く足を運んでくれました。来場者からは「環境について楽しく学ぶことができてよかった」といった声が寄せられるなど、市が発信する環境情報とエコチルが持つ親しみやすさの相乗効果が発揮されたイベントとなりました。
「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル」に登場した「エコチル塔」
また、「GREEN×EXPO 2027」について2026年には3月号で開幕1年前の巻頭記事を掲載、5月号からは連載記事「横浜グリーンエクスポ」を隔月掲載でスタートさせています。環境活動事業課で環境教育を担当する名渡山玲央さんは「開催前、そして開催中もエコチルを活用して記事を載せることで、子どもとその保護者にGREEN×EXPOの魅力を分かりやすく伝えていきたいです」と話しています。
エコチル活用で取り組みやすさ向上
夏休みの「エコ活。」をすべての学年へ
エコチルを環境発信の媒体としてとらえるだけでなく、ほかの取り組みにも活用しています。2004年度から20年以上続く「エコ活。大作戦!」。夏休みの期間中に児童が、エコにやさしい項目をまとめた「エコライフ・チェックシート」を使って、省エネや生物多様性の保全、3Rなどの環境行動に取り組むものです。このチェックシートをエコチル7・8月合併号に掲載しました。
「エコ活。」を掲載した横浜版の2026年7・8月合併号
エコチルとの連携により、これまで単独で作成していたチェックシートをエコチル紙面に入れられたことや、回答フォームから集計までエコチルのシステムに組み込むことができました。それにより、チェックシートの印刷や各学校へのチェックシートの送付、児童への配布と夏休み後の回収、市への送付などの作業がすべて不要に。取り組みやすさの向上とともに、学校、事務局、児童それぞれの負担軽減につながりました。
環境教育担当の今野さんは「それまでは4、5年生が『エコ活。』の対象でしたが、全学年に配布しているエコチルにチェックシートを組み込むことで、対象も1年生から6年生までの全学年に広げることができました。省エネや資源の分別などのエコにやさしい行動を意識して行動するのは、家にいる時間が比較的長い夏休みがチャンスです。子どもに親しまれているエコチルらしいデザインのチェックシートで、行動と定着が期待できます」と成果を強調。エコチルの活用によって、児童の環境行動のきっかけづくりにつながりました。
環境教育は平和の入り口
未来へ広がる行動の輪
「かつての公害問題と同じく、今の環境問題の解決には市民一人ひとりの行動が大切です」と環境活動事業課長の森山さん。
大気汚染や水質汚濁といった昭和期の公害問題と異なり、今の環境問題は温暖化や生物多様性など地球規模で、それらが複雑に絡み合って自分たちの生活にどんな影響をもたらすのかが見えにくいという側面もあります。その点をふまえ、森山さんは「環境問題を知ることは、地球上のいろいろなつながりを知ること。まず知ることが大事」と強調します。
「いろいろな環境問題が、自分たちの生活や将来にどんな影響をもたらすのかを知れば、自分事として想像し行動できます。身の回りの自然や今ある資源やエネルギーを大切に生活する、そんな環境にやさしい行動が増え、その行動の輪がつながり笑顔がたくさんの社会になってほしいです。今、世の中にある争いごとの多くは資源の奪い合いも原因の一つのようですから、奪い合わない社会が実現すれば、平和へとつながっていくのではないでしょうか。環境教育は平和の入り口です」と森山さんは期待を込めて未来を見通します。
「横浜を住み続けたい街にしていくこと、さらには、平和な社会をつくり出すことに向け、エコチル横浜版から環境情報を発信し、暮らしの中での気づきと行動につなげたい。皆さんとこれからもしっかり行動していきたい」と話していました。
「横浜を住み続けたい街に」との思いで、エコチルから環境情報の発信を続けていく横浜市(中央右が市庁舎)
GREEN×EXPO 2027
「幸せを創る明日の風景」をテーマに、2027年3月19日~9月26日の約半年間にわたって開かれます。1990年の大阪花博以来37年ぶりに日本で開催される、最上位クラス(A1)の国際園芸博覧会です。会場は米軍から返還された旧上瀬谷通信施設(横浜市旭区・瀬谷区)。約100ヘクタールの会場内には1000万株の花と緑がお目見えし、自然と共生した持続可能で幸福感が深まる社会の創造を提案し、友好と平和のメッセージを発信していきます。
©EXPO 2027/提供:GREEN×EXPO協会
「GREEN×EXPO 2027」(2027年国際園芸博覧会)の会場イメージ
エコチル特別記者、元産経新聞記者。産経新聞では企業や役所、警察などを取材し、1面や経済面、社会面に記事を書きました。そのあと中小機構(中小企業を応援する国の機関)では全国各地の中小企業を取材。2児の父親。子どもたちの幼稚園、小学校時代は運動会などの行事にはほぼ欠かさず足を運びました。趣味は50代で始めたピアノ。全然上手ではありません。






